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「少年と本」
僕の欲しかった本。
ずっと昔に 読んだことのある本。
よく わからなかったけれど 心にひっかかるものがあって 忘れられなかった。
今読んだら 何がわかるだろうか?
また何年か経ったら
違うものを感じるだろうか?
もっと わからなくなるだろうか?
少年は時々そんな風に一冊の本のことを思い出します。その本はお祖父さんの本でした。古くて重たい本に、小さな少年はどうしようもなく惹かれてしまったのです。大好きなお祖父さんが大事にしていた本を、こっそりと持ち出しては夢中になって読みました。読めない文字があっても、自分の想像した単語を当てはめて、時間が経つのも忘れて読み耽りました。そんな少年を見たお祖父さんは、少年が大人になったらこの本を譲ってあげましょう。と約束をしました。
しかし、その本はいつの間にか行方が分からなくなってしまったのです。
大きくなった少年は、そのタイトルも作者もわからなくなった本を探しています。
探している本が見つかったら、お祖父さんにプレゼントしようと密かに心に誓っている少年でした。
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